今日11月11日、大相撲の一年を締めくくる十一月場所が九州・福岡国際センターで始まります。見どころは多々あります。ふたつほど挙げてみます。
まずは横綱・稀勢の里。8場所連続休場から進退を賭けて出場した九月場所では皆勤(10勝5敗)を果たし、引退の危機をひとまず回避しました。年6場所制になった1958(昭和33)年以降、5場所以上連続で休場した横綱は稀勢の里のほかに5人います。そのうち、貴乃花と武蔵丸は復活優勝を遂げることができませんでしたが、大鵬、柏戸、北の湖の3人は、引退するまでに再び優勝しています(大鵬6回、柏戸3回、北の湖1回)。稀勢の里はどちらになるでしょうか。
今場所、白鵬、鶴竜の両横綱の休場が発表されました。稀勢の里にとっては初の一人横綱の場所となります。15日間すべてで結びの一番をとるのは初めての経験。重圧はあるでしょうが、報道を見るかぎり、体調に不安はないようなので、去年の三月場所以来、1年8ヶ月ぶりの賜杯獲得へ、大きなチャンスです。まずは横綱昇進後、出場6場所のうち4場所で黒星発進という初日を乗り切りたいところ。その初日は東小結の貴景勝と顔を合わせます。過去の対戦成績は2勝2敗。先場所は2日目に対戦し、土俵際に追い込まれるなど一瞬ヒヤリとしましたが、突き落としで稀勢の里が勝っています。完全復活への第一歩が注目されます。
そしてもうひとつは、平成最後となる年間最多勝争いです。今年の九月場所を終えた時点で、幕内勝ち星上位は以下のようになります。
1位 鶴竜 51勝15敗9休
栃ノ心 51勝16敗8休
3位 御嶽海 46勝29敗
4位 髙安 44勝16敗15休
5位 逸ノ城 43勝32敗
魁聖 43勝32敗
このうち、すでに鶴竜と魁聖は休場が決定しているので、残り4人で争うことになります。候補筆頭は、やはり栃ノ心です。3位の御嶽海が全勝すると61勝。栃ノ心は、あと10勝で並びます。初の年間最多勝へ、現時点でいわば“マジック10”というわけです。栃ノ心は新大関の七月場所が5勝2敗8休、そして先場所が9勝6敗。初の年間最多勝へ向け、大関3場所目となる今場所で2ケタ勝利を挙げるのは、さほど難しくはないでしょう。過去、年間最多勝を獲得した22人中、20人が横綱経験者。栃ノ心も加わりたいところです。
それにしても、数字的には淋しいですね。栃ノ心が全勝しても、今年の通算勝ち星は66勝。年間70勝に届かず最多勝となるのは、これで4年連続となります。最近の年間最多勝は以下のとおりです。
年 力士名 勝敗(優勝回数)
2007年 白鵬① 74勝16敗(4回)
2008年 白鵬② 79勝11敗(4回)
2009年 白鵬③ 86勝4敗(3回)
2010年 白鵬④ 86勝4敗(5回)
2011年 白鵬⑤ 66勝9敗(4回)
2012年 白鵬⑥ 76勝14敗(2回)
2013年 白鵬⑦ 82勝8敗(4回)
2014年 白鵬⑧ 81勝9敗(5回)
2015年 白鵬⑨ 66勝12敗12休(3回)
2016年 稀勢の里① 69勝21敗(0回)
2017年 白鵬⑩ 56勝9敗25休(3回)
※○数字は年間最多勝獲得回数。2011年は八百長問題で三月場所が開催されなかったため、年間5場所の成績
白鵬の独壇場で、そのすさまじさが際立ちます。2010年と2011年はともに年間4敗だけ。全盛期の強さは圧倒的でしたね。その白鵬も最近は休場が目立ち、今年は皆勤したのが2場所だけで、優勝も1回にとどまりました。白鵬はおそらく今後、出ては休み、を繰り返して現役生活を長く続けるものと思われます。“白鵬一強時代”はもう終焉に向かっているといっていいでしょう。来年の年間最多勝は、誰が獲得するにせよ、ハイレベルな数字でとってほしいと思います。