大相撲一月場所千秋楽。優勝争いは2敗の西前頭4枚目・正代と、1敗の同17枚目、幕尻の德勝龍の2人に絞られていました。正代が勝ち、結びの一番で德勝龍が敗れると、優勝決定戦になります。ワタシはそれを願い、必ずそうなるハズ、と信じていたのですが……そうはなりませんでした。
まず、正代は西前頭2枚目、御嶽海と対戦。過去の対戦成績は正代の7勝9敗です。さらに御嶽海はここまで7勝7敗とあって、勝ち越しへ向けて必死にくるのは目に見えていました。そんな中、正代はどんな相撲をとるのか。弱気の正代が出ないといいな、と思いつつ、テレビの前で見届けます。
心配は無用でした。正代は気合いが入っていましたね。立ち合いもよかったです。前に出て御嶽海を右から抱えて寄り、土俵際で突き落としを食らってもかまわず体を浴びせて押し出し。見事でした。完勝といっていいでしょう。ワタシもまたテレビの前でよしっ! と声を上げていました。
これで第一関門は突破。あとは德勝龍の結果を待つだけです。德勝龍は結びの一番で大関・貴景勝との対戦。千秋楽の結びに平幕が出場するのは昭和以降3度目で、幕尻が登場するのは史上初のことです。
この一番、ワタシは優勝の可能性がなくなったとはいえ、貴景勝が大関の意地を見せて圧勝するものと思っていました。いや、そう祈っていた、というほうが正しいですね。しかし、その祈りは届きませんでした。
德勝龍は強かったです。なんとしても優勝する、という執念を感じました。力相撲で貴景勝を寄り切り、自らの白星で優勝を勝ち取りました。今場所の德勝龍は神がかってましたね。記録的にも、特記事項が多々あります。
▽33歳5ヶ月で初優勝するのは、年6場所制となった1958年以降、旭天鵬の37歳8ヶ月(2012年五月場所)、玉鷲の34歳2ヶ月(2019年一月場所)に次ぐ史上3番目。日本出身力士では最年長。
▽平幕優勝は去年五月場所の朝乃山以来31回目。三役経験がない平幕制覇も朝乃山以来で10人目。
▽幕尻優勝は2000年三月場所の貴闘力以来、20年ぶり2回目。ただし、貴闘力は東前頭14枚目で、西前頭14枚目に若の里がいたため、幕内最下位の番付ではなし。今回の德勝龍が「史上最大の下剋上」。
▽奈良県出身者の優勝は1922(大正11)年春場所の鶴ケ浜以来、98年ぶり2回目。木瀬部屋所属の力士としては初。
▽德勝龍は先場所十両。幕内に復帰した場所で優勝するのは史上初。
▽学生出身力士では9人目の制覇。近大出身では朝潮、朝乃山に次いで3人目。
いやあ~いろいろありますね。記録マニアをくすぐるデータが満載です。
優勝決定戦にならなかったのは残念でしたが、なにはともあれ盛り上がりました。ただ、横綱・大関陣がふがいなかっただけに、今後が心配です。近いうち、横綱・大関がいなくなってしまうのでは? という不安が抜けません。早いとこ、誰かが昇進してほしいですね。
最後に、今場所德勝龍に唯一土をつけた西前頭16枚目・魁聖が、千秋楽でなんとか勝ち越しを決めました。個人的には三賞をあげてもよかったのでは、と思います。